若手医師と商社マンが最強を目指すブログ

平成生まれの帰国子女である3年目医師と4年目総合商社マンがそれぞれの最強への道を虎視眈々と狙う

なぜ医者は金の話をしないのか

医師の達也です。

諸事情により、現在の僕の基本給はその辺のOLと同じぐらいになってしまっている。しかも今年度は非常に出費が多く、僕の収支は圧倒的なマイナスだ。そこで、副収入を得るため、平日の夜間や土日に医者バイトを行い、収入を増やしているわけだ。

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僕はお坊ちゃんであるせいか、今までの人生であまり金を意識しないで生きてきた。そして社会人になり、お金のことを考えずに生活していると、借金が増えたり、支出が分不相応にふえてしまうことが多くなり、結果的にキャリア上でも損をしてしまうことがわかった。お金の仕組みや税金のシステムを人並み程度に知るとは、豊かな人生と大きな野望を叶えるために、極めて重要であると痛感したのだ。

では僕以外の医者はその辺に意識的かと言うと、どうもそうではない。

医者に共通して欠如している能力として、お金に関する知識、俗に言うファイナンシャルリテラシーが挙げられる。医者の懐事情は「普通に生きてたらお金が貯まっていた」「普通に生きているけど、お金がない」の2パターンがほとんどである(特に若い医者)。これは元々の金銭感覚の違いに起因し、各個人のお金に対する知識の差では無いと考えた方が自然だ。

医学部は理系で最も優秀な学生が集う場所であるはずなのに、なぜこのような事態になっているのか?それは医学部がほとんど医学の専門学校のような場所となっており、医学以外の学びはほとんどないから、と言うのも一因だろう。

だが、それだけとは考えにくい。僕が医者にファイナンシャルリテラシーが育たない要因として一番大きいと考えるのは「者はそもそもお金に困っていない」と言う理由である。

これは、研修医1年目の平均年収は400−600万円であり、普通に独身で生活していればほとんど困ることがないことからも推測できる。おまけに結婚した場合、医者の結婚相手のほとんどは医者か看護師なので、相手もそれなりにいい稼ぎである。なおさらお金に困らないのだ。

僕も経験してわかったことだが、人はプロブレムが起きない限り、興味があること以外のことは学ぼうとしないものだ。単位取得のために勉強が必要だから、お金に困っているから、という状況でない限り、わざわざお金の勉強をしようとは思わない。

医者をしていると、謎の不動産斡旋業者や税金対策の勧誘電話がしょっちゅうかかってくる。こんな怪しい電話に引っかかる奴はいないだろうと以前は思っていたのだが、どうもそうではなさそうだ。

3年目になると、知り合いの知り合いぐらいの距離で、時々「資産運用」と称してローンを組んでマンションを買う人が出てくる。もし勉強して買ったのなら個人の責任だろうが、もし詐欺まがいの商法に引っかかって買っているのだとしたら目も当てられない。

 

医者がお金の話をしたがらない理由としてもう一つ考えられるのは「金をたくさん稼ぐこと=悪」と言う認識がデフォルトだからだろう。

医者が稼ぎを増やすには、雇用形態を変える(常勤・非常勤など)、基本給をあげる(年功序列での昇進)、バイトを増やす、開業する、がほとんどだ。

ここで重要なのは、医者界の「世論」を生み出すのは、大学病院などのアカデミアに所属する医者であると言うことだ。そして、そういった職場は基本給が非常に低いことがほとんどである。基本給だけでは家族を養いつつリッチな生活が出来ないので、バイトや外勤を行う必要が出てくる。

問題になるのが、大学病院で長く所属している場合、歳を重ねると、体力的・時間的制約でバイトや外勤の頻度は下げざるを得ないことだ。昇進して基本給がちょっと上がっても、元々の収入のメインが外勤・バイトなので、年数を経ると収入はむしろ下がっていく。土日に家族サービスが入ったり、平日夕方に委員会や会議が入って忙しくなればなるほど外勤には行けなくなり、上司よりも部下の方が給料は高いという逆転現象が起こる

要するに大学病院で働くことは、大学内の昇進や基礎研究への興味>>収入、という人しか続けられないはずなのだ。しかし、それを声高に叫ぶと大学医局のテンションが下がるし、多くの人間はそう行った割り切りは出来ない。

そのような事情で医者は、お金を稼げばえらい、という風には(少なくとも建前上は)評価しないようになっている。偉さとは、大学医局での出世だったり、論文の投稿数だったり、勤務年数だったり。そんな瑣末なことで妬まれたり尊敬されたりしている。医者は、藤沢所長の言うところの「権力を取り合う仕事」の典型なのだ。

 ある程度歳をとった大学病院医師が、権力闘争に敗れた場合、再チャレンジしたり別のアカデミアヒエラルキーに移らず、市中病院の重要ポストに異動したり、開業したりするのはそれが理由の一つなのかもしれない。

まとめると、医者があまりお金の話をしない理由は「語れるほどの戦略がないから」と「お金を追求すると自分のレゾンデートルが毀損されるから」と言うのが僕の結論である。

 

ところで、僕がお金に興味を持ってから、身近な医療者に各々の経済事情を聞いて回ると言う悪癖が生まれた。しかし、これは多くのフォロワーの皆さんにお叱りを頂き「絶対やってはいけない」であると勉強した。初対面の女の子に、いきなり経験人数を根掘り葉掘り聞くようなものだ。

今はそう言った話題を相手側から振ってきた場合にのみ限り、ディスカッションを行うように注意している。