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若手医師と商社マンが最強を目指すブログ

平成生まれの帰国子女である3年目医師と4年目総合商社マンがそれぞれの最強への道を虎視眈々と狙う

最高の現場リーダーを作る:愛され指導医になろうぜ、志水太郎

書評/レビュー 医療界の真実

愛され指導医になろうぜ、志水太郎

著者のキャリアと総合内科

著者は現役の総合内科医である。

指導医が、どうすればメンバーの信頼を得てチームの性能を最大化し、彼らの力を効果的に引き出せるか、というのが本書の主題だ。

 

ここで、総合内科に関して簡単に説明する。

日本の医師は、専門家Specialistが多いと言われていてる。例えば、循環器内科、消化器内科、心臓外科、といった、「臓器別」の専門家である。それに対して総合内科とは、科にこだわらず、内科疾患を幅広く担当する。

日本では、この総合的な(Generalな)医師、というのは元々あまり多くない。大体が「俺は〇〇の専門家で、さらに他の内科疾患も(大体)診ることができるぜ」と言った感じである。しかし昨今、高齢化の影響で、患者が抱える医療的な問題点が、一つの科だけではカバーできなくなってきた。 

現代の日本の医療現場では一人の患者が、心臓病、腎臓病、糖尿病、関節症など、多くの科にまたがる疾患を、複数抱えているのが普通である。このような医療現場では、ひとつひとつの臓器の専門家ではなく、総合的な診療能力を持つ医師、俗にいうジェネラリストが求められるようになってきたのだ。

 

著者は日本の市中病院で総合内科医としてのトレーニングを積み、米国公衆衛生大学院MPHを修了し、豪州でMBAも取得した。その後は国内の市中病院を中心に総合内科の研修プログラムの立ち上げを行なっている。

臨床医としても国内でアルバイトをしまくり、200近い病院で仕事をした経験を持つという。そういった活動を通し、次世代のリーダーとして強い求心力も持つ人物として、頭角を現してきた。

 

医者に求められるリーダーシップとは何か

「リーダーとしてチームをまとめていこう」そのようにリーダーシップを意識したその瞬間から、リーダーの仕事は始まる。

例えば、医師が自分一人で、孤立無援の当直を考えてみる。確かに医師は一人しかいないが、例えばそこにナースが一人加われば、それは既に立派なチームである。そこに事務職員、薬剤師などが加われば、すでに一種の他職種医療ユニットとなる。 

医師のリーダーシップは、大きな大学病院・市中病院の上級医だけに求められる能力ではなく、現実的にどんな場所でも必要なものと言える。

 

では、どのようにメンバーの信頼を勝ち得ていけば良いのか。

著者は、一番重要なことは「みんなが協力してくれるからこそチームが維持・機能できるという感謝の気持ち」であると説く。

リーダーからの感謝の言葉や気持ちが、「この人と頑張っていこう」と他のメンバーとの結束を強めるのである。迷った時はいつもこの基本理念に立ち返ろう。

 

行動コントロールVS結果コントロール

チームメンバーのマネジメントには、大きく分けて二つの方法がある。

行動コントロール結果コントロールだ。

 

行動Actionコントロール

メンバーの行動を細かくルールで規定・標準化し、指導する。この指導方法では、指導されている側があまり思考回路を働かせる必要がないが、言われたことに従っているだけで一定のクオリティは確保できることが大きな利点である。

若手や経験の浅いメンバーに向いており、手取り足取り指導することで、安定して仕事を遂行することが可能となる。

結果Resultコントロール

逆に、メンバーに大目標だけ指示し、実際の仕事のやり方については各人に任せる。そして、メンバーが出した結果を評価する方法である。 

これは、各人の自発性が求められるが、ある程度スキルの上がったメンバーでは自尊心が満たされ、仕事も早く進む。手取り足取り指導するよりも、自主性に委ねたほうが、結果的にチーム全体のアウトプットが良くなることもある。 

結果/行動 コントロールの割合

なお、これらの二つの指導方法は、どちらか一つ選ぶものではなく、各メンバーごとに、割合を調整して適用するものであることに留意したい。基本的に、経験の浅い研修医には、行動コントールの割合を増やす。対して、後期研修医などある程度能力・経験があるものは、結果コントロールの割合を大きく設定する。 

メンバーごとの結果/行動コントロールの割合は、医師としての学年で規定されるのではなく、実際の技術レベルで判断することが重要だ。

 

メンバーの能力の向上に合わせて、行動コントロールから結果コントロールの割合を増やしていく。そして逆に、仕事の内容が高度すぎてそのメンバーでは満足に行えない場合は行動コントロールの割合を増やす必要がある。

なお、逆方向のシフトは、本人の自尊心を大きく傷つけ、モチベーションが下がってしまう。本人にバレないように行う必要がある。

 

出来の悪いメンバーへの接し方

3年目になっても、相変わらず1年目に近い程度のパフォーマンスのメンバーも存在する。しかし、そういったメンバーを「同学年より下」と評価し「出来の悪い研修医」という烙印を押してしまって良いのだろうか。

そのようなレッテル貼りは、メンバーに不要な劣等感を産み付けるだろう。今後10年以上続くであろう、医師としての成長曲線。その時点での平均からの上や下、という単一な情報で評価するのは、あまりに短絡的だ。

 

そのメンバーが伸び悩む理由。それは、要領かもしれないし、環境かもしれない。しかし、本人なりに悩みながら、上級医からのストレスに耐えながらも、他の人に追いつこうと頑張ってきたのだ。

そんな人達を応援こそすれ、悪い評価をして突き落とすことなど、どうしてできるのか。成長の伸びは各人で違う。それぞれの個人レベルの変化値に注目し、それが最大化するよう努力するのが、本物のリーダーだ。

 

モチベーションについて

モチベーションには、給料・ポジションといった外発的な要因と、充実感や達成感といった内発的な要因の2種類がある。モチベーションが高まると、一般的に仕事のパフォーマンスは高まる。各人のモチベーションを高めることも、リーダーの大事な仕事だ。

 

しかし「モチベーションの有無は仕事のパフォーマンスの根幹を為すものではない」と著者は考える。モチベーションの有無にかかわらず、仕事をしなければならないこと多いし、モチベーションがないと言いながら、仕事はきっちりやる人もいくらでもいる。「モチベーションの有・無」と「仕事をやる・やらない」ということは、別の軸の問題である。

モチベーションが低下したメンバーは、仕事のパフォーマンスに悪影響を起こすことがある。その原因が個人的な私生活にあるのであれば、介入はほぼ不可能だが、リーダーの行動がマイナスのモチベーションを引き起こすことだけは、絶対に避けなくてはならない。

 

マネジメントの観点から言えば、リーダーはメンバーの仕事の質・効率を上げるため、各人のモチベーションを最大のアウトカムとして設定するのではなく、まずは具体的な業務内容の改善に最大の注力をするべきであろう。

「その仕事がうまくいけば、患者にどうメリットがあるか」また「どうすれば仕事の効率が上がるのか」というプロセスにこそ、焦点を当てて教育をするよう心がけよう。

 

愛され指導医の一日

指導医は忙しい。

研修医の見落としがないか目を光らす、検査の予定をチェック、研修医が精神的に疲れていないかのスクリーニング、他科や他職種との軋轢の解消、教育のためのコンテンツ作りなど。やることは膨大である。

そのよう毎日の中で、個人的なインプット(自分のための勉強)やアウトプット(論文、書籍、記事の執筆など)の時間をいかに確保するかが、1プレイヤーでもあるリーダーとしての「伸びしろ」を決定する。

自分の時間をどのように確保していくか、つまり自由にできる時間をいかに確保するかが、重要となってくる。

ここで著者の一日のスケジュールを抜粋しよう。

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私は短時間睡眠ができないので、このスケジュールになっている、とのことだ。4−5時間睡眠は、平均と比較したら、相当な短時間睡眠ではあるが。

著者は、最も安定して集中できる時間帯は、早朝であると考え、その時間に、個人の勉強や執筆を行なっている。

さらに時間効率を高めるため、 以下のような工夫をしている。

  • 食事は外食or出前で済ます
  • 移動は手が塞がるので車はNG。空いている時間帯の電車推奨
  • エレベーターの待ち時間に勉強する。スマホの問題集。
  • テレビなし。受動的な時間を減らす。
  • 飲み会は新しいチームが決まった時の決起集会に限定
  • 仕事上の信頼は、仕事で作る

 

 

 

 

誰もが、このストイックなライフスタイルで生活できるとは考えられないが、一つのロールモデルとして、参考になるのではないだろうか。特に、朝に創造的な活動時間を設定する、というのは、他の書籍でも度々見かける主張である。是非参考にしてほしい。

 

著者の情熱と医者の世代交代

僕はこの本を初めて読んだ時、

「ついに若手からこんな本が出たか!」と雷に打たれた。

 

今でも、医者の教育は前時代的な、徒弟制度に縛られている。

しかし、それでは、次世代を担うリーダーは輩出できない。

著者の壮大なビジョンを知った衝撃は、とても大きい。

 

最後に、あとがきを抜粋を紹介する。

この本の読者のあなたも、今まさにリーダーとして、または個人として困難に立ち向かっている最中かもしれませんし、いつか挫折を経験するかもしれません。私はその戦いの機微を理解します。だからこそ、日々頑張って戦うあなたを私は全力で応援しています。

 

この本は次世代のリーダーのために書きました。この本が明日のリーダーに役立つことを心から願っています。

 

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