若手医師と商社マンが最強を目指すブログ

平成生まれの帰国子女である3年目医師と4年目総合商社マンがそれぞれの最強への道を虎視眈々と狙う

あまり商社マンを見くびらないほうがいい

開司です。

前回の「最近商社マン転職しすぎだろ」の記事は思いの外に反響が大きく、記事内容と記事の真偽に賛否があったようです。流石にツイッターで暴れすぎだと達也からも怒られ、大変大人気なかったなと反省しております。

先の記事を通じて、次の様な主張が多かったように思う。

  • 商社マンの様なヘタレサラリーマンの業務経験が、コンサルや投資銀行といった高級な仕事に活かされるなんてありえない。もともと地頭の良い人が、たまたま最初は商社に行ってしまい、すぐに転職してコンサルや投資銀行に行くだけだ。
  • 商社からnon MBA投資銀行に行ったなんて話聞いたことが無い。商社での経験は汎用性が無く、他に活きない。体力も飲み会のセッティングだけだろ。
  • つまり商社の業務経験は転職市場では無価値。転職をする際にはポテンシャル採用を狙うしか無い

どうやら、「エリートサラリーマン」であらせられる先輩方の商社マンに対する評価は、極めて低いなようだ。過去にも、商社マンの仕事はどういったものか、という記事を書いたことがあったが、他の商社クラスタの人達から「あまりに表面的であり、本当にこれが実際に商社で働いている人が書いているのか?」という疑問を提示された。

今回は、今一度商社マンのあり方を見直し、労働市場おける商社マンの経験の価値をどのようなものか、考察したい。

一年目開司に衝撃を与えた商社マン

ここに、私が入社して間もなくロールモデルとした商社マンがいたことを紹介する。それは、2013年秋ごろに下記書籍を出版された小林敬幸氏だ。

 ビジネスをつくる仕事小林敬幸

小林氏は五大商社の一つ「三井物産」にて、数多くの新規事業起ち上げに携わった。お台場に最大の観覧車を作ったパレットタウン開発、ライフネット生命保険の起ち上げ、リクルートとの資本提携等である。もともとB2Bに強みを持つ三井物産には似つかわしくない事業起ち上げばかりである。だが、これらの事業開発が好き放題出来たのは、三井物産日系企業だからだと小林氏は本書で語る。

この本が出版されたのが3年前。私は当時1年目のへっぽこであった。先輩の勧めでこの本を買って読んでみた。そして、あの巨大な総合商社/三井物産で本当にここまで出来るのかと、目からウロコが落ちる思いであった。

タイトルどおり、新規事業の起ち上げの方法、その際に心得るべきことなどを本人の体験を交えて熱く語っている。正直言って体系的にはなっていない。しかし、著者の言うように、ビジネスとは「生き物」の様なもの。人間が完全把握、予測のできるものでは無い。それを伝えるために、敢えてこのような構成にしているのだろう。

一方で、ビジネスを作るに向けて、自分が何をすればいいかはわかる。それをこの本では語っているのである。

新種「Dream Oriented商社マン」とは

前回の記事では下記の図を用いて、商社とは「高給であることに最大の価値が置かれるMoney Orientedな職業」であると紹介した。

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そして、これが労働市場での商社マンへの評価でもあるだろう。

しかし、同書籍の著者である小林氏の理解は違う。下の図ように捉えているはずだ。

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小林氏は、日本に於ける新規事業開発は、米国のシリコンバレーのようにベンチャー企業が担うよりも、総合商社を含めた大手が担う方が適していると主張する。なぜなら、日系企業大手は、良くも悪くも事業を特定のものにフォーカスすることが無く、本当に儲かることさえ証明できれば、どんな事業でもスタートすることが可能だからである。

同氏は商社を極めてDream Orientedな職業と捉えている。確かにこれは個人レベルでは正しい。総合商社はボトムアップで案件が形成されていくので、下の平社員たちから提案がない限り、新しい事業は全く生まれない。総合商社では、実は下っ端が最も自由で楽しいはずなのだ。

私自身、これは今更ながら実感し始めているところである。

今は、新規事業起ち上げチームにアサインされ、国内外のベンチャー企業への投資を行うべく世界を飛び回る毎日だ。自社独自の事業起ち上げを、チーム一丸となって進めている。日夜アイディアを考えまくるという、とてもエキサイティングな日々を送っている。

確かに、私が加わる前から走っている、ぶっちゃけあまり興味のない事業もある。そこで上司に「この新規起ち上げに集中したい」と伝えたところ、多くの時間をそちらに割くことを許可してくれた。

商社マンのタイプ別労働市場での価値

さて、最初の問いに戻る。上に書いたような、商社における仕事経験と言うのは、労働市場で本当に価値は無いのか。

私の結論は「Money Oriented商社マン」には価値がないが、「Dream Oriented商社マン」には価値がある、である。

Money Oriented商社マン

前者の場合、商社での経験内容は「受身的に上司の媚び諂い、人間関係を円満に形成し、何の新規性もない仕事ばかり」となる。なぜなら、上司に気に入られることが、商社の人事評価基準であるからである。

結果的に自分が今いる会社の人間関係しか強化できず、その人事制度上でしか生きられない人となる。こういった輩の労働市場における価値は、確かに低いと言えよう。

一方、後者「Dream Oriented商社マン」に目を向けてみる。

Dream Oriented商社マン

まず、出世があまり期待できないという意味で、商社内における価値は下がる。紹介した書籍の著者、小林氏も86年に入社していながら次長止まりであり、出世コースからは外れているものと考えられる。

こちらのタイプの商社マンは、出世よりも「本当に儲けるために何の事業を始めるべきか」という悩みが頭の中を占めている。そういったことを日夜考え、実行に移す。このような仕事経験が、果たして労働市場において価値が無いのだろうか。もしそうであれば、少なくとも、サイバーエージェントDeNA、人材輩出会社と呼ばれるリクルート出身者も労働市場での価値が無いということになる。

ただ、商社である程度、出世してしまうと、一気にMoney Orientedな思考にならざるをえないと言うのも事実。偉くなると、会社の政治に対するコミットが一層強くなるからだ。

Dream Oriented商社マンとなり、とっとと転職せよ

一般的な商社マンのイメージは、バブル時代の鉄鋼営業や資源営業など、一部のゴリゴリ商社マンから生み出されている。それは過去の姿だ。今後は「ビジネスをつくる」ことに集中しなければならないと、商社自身が思っている。会社経営方針としては正直ナンセンスだと思う。株式市場・株主の多くは事業の絞り込みを期待している為だ。

しかし働く従業員にとっては、これほど自分が活躍出来る場があるというのはありがたいことだ。

私が考える、ベストな商社マンのあり方。それは、若手のうちに自分でビジネスを作る経験をし、自分の労働市場価値を高め、転職しなさいと言うことだ。 

商社に在籍していた時の豊富な経験。これは、いざ商社の外に出て、さらにDream Orientなビジネスを作るときに、必ず役に立つと信じている。

商社での経験を活かすも殺すも、自分の行動次第なのだ。