若手医師と商社マンが最強を目指すブログ

平成生まれの帰国子女である3年目医師と4年目総合商社マンがそれぞれの最強への道を虎視眈々と狙う

DeNA炎上にみる情報民主主義としてのキュレーションメディア

ご無沙汰しております。商社マン開司です。 

DeNAのキュレーションメディアが炎上しました。

同社はその対応として、炎上のきっかけとなった医療・健康関連情報サイトWelqはもちろんのこと、インテリア・住宅関連情報サイトiemo、女性向けファッション関連情報サイトMery他、すべてのキュレーションメディアサイトを閉鎖しました。

jp.techcrunch.com

www.buzzfeed.com

この事件の評価は様々ありますが、基本的にはDeNAはクソ。あいつらは詐欺集団だ。と言ったネガティブなものが大半だと思われます。そして、そこからさらに対象を広げて、キュレーションメディア自体がクソ・ネット情報の限界、といった論調になっています。

 

しかし、私は世に言われているような、特にマスコミがわけもわからずに叫んでいる様な「ネットキュレーションメディアはすべて悪だ」とする論調には賛同しかねます

「いやいや、著作権侵害をしている犯罪行為だから、どう考えても悪いだろ」と思われるかもしれません。確かにDeNAは、引用という正当な方法を取らずに「リライトというParaphrasing」で誤魔化そうとしており、この問題点を指摘されたことは、当然罰せられるべきでしょう。

しかし、逆に言えば「正式に引用さえすれば、パクリだろうがなんだろうがキュレーションコンテンツをリスクなく量産できる」という意味にも取れます。著作権問題と言うのは訴訟のきっかけであって、問題の本質では無いでしょう。

今回は、キュレーションメディアとは何か、今回の事件の概要、私の考察をの順に、述べたいと思います。

 

1. そもそもキュレーションメディアとは?

そもそもキュレーションメディアとは、美術館等にいるキュレーター(展示品の企画、選定を行う者)からできた和製英語であり「情報をコンテンツ作成者独自の切り口から収集し、取りまとめしたメディア」のことを指します。

例えば、渦中のWelqであれば医療関連・健康関連の豆知識やおすすめ情報を発信していたサイトでした(下図がWelqのトップ画面)

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(画像出典:ハフィントンポスト2016年12月09日 06時47分 JST)

一般的な情報サイトとDeNA他が作成していたキュレーションサイトは何が違ったかというと、大きな相違点として①ビジネスモデルの違い、②SEO精度の違い、という2点が挙げられます。

それまでのネットサイトとのビジネスモデルの違い

Yahooニュースやスマートニュース等の。今となっては「まとも」とされるネットニュースサイトは、基本的にバナー広告、Yahooの場合は動画広告も含めた、広告収入を基本としています。それは記事の内容にかかわらず、ユーザーの動向を追跡した結果に基づくただのバナー広告の枠を用意して、そこの広告主、広告エージェンシーから収益を獲得しているのです。

一方でキュレーションメディアは、広告収入を得ているという点では同じですが、その広告がアフィリエイト広告である点が特徴的でした。アフィリエイトとは、読者をクライアントのサイトに誘導し、サイト内でクライアントが決めた成果(商品の購入やサービスの成約など)を上げることが出来た際、その対価としてクライエントから報酬を得る、という仕組みです。

他にDeNAではMERYの雑誌を発刊したり、特定のクライアント商品・ブランド等とのタイアップを行うことで閲覧毎に広告料を取ったりと、単純なアフィリエイト広告だけではなく、そこからビジネスモデルを拡大させていたようです。

その為決算説明の資料でも、キュレーションメディアはDeNAの「新たな収益の柱」として期待を寄せた発表をしていました。

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(出典:『DeNAが突っ走るキュレーションメディアのビジネスモデルとは?驚愕の広告収益!』DeNA2015年3月期決算説明会資料

DeNASEO対策

また、キュレーションメディアの他の情報サイトとの違いとして、SEO精度の違いがあります。ここが今回の事件で槍玉に挙げられた箇所だと思います。

キュレーションメディアでは一般的に、自分のアフィリエイト収入を最大化するために、可能な限り自分たちのコンテンツが検索結果の上位に来るようにSEO (Search Engine Optimization)を行います。

このSEO対策のやり方が、相当にえげつなく、DeNAキュレーションメディアの存在意義そのものを飲み込んでしまったことが、今回の事件の一番の争点です。

それでは事件を詳しく見ていきましょう。

 

2. 今回の事件概要

事件の発端

今回の事件で起きたこと振り返ってみます。DeNAは11月29日に下記リンク先にあるようなプレスリリースを発表しました。

dena.com

DeNAのWelqの掲載する内容の信憑性を疑う声がユーザーから多く寄せられたとのことでした。「医学知識に乏しい」「薬機法に抵触しそうな記事が多い」「他サイトからのコピペが多い」などと言った声があったようです。

DeNAは当初は「医療に関する専門家を導入して、コンテンツの内容を強化します」と言っていました。しかしその数日後、Welqを始めほとんどのメディアの閉鎖が発表されました。

結局、これらのメディアの内容が、真偽もへったくれもないクソコンテンツだったと、DeNA自身が認めた、ということです。

jp.techcrunch.com

何故この事件は叩かれるのか

それでもDeNAのキュレーションメディアが大量のユーザーを囲い込むことが出来たのは、SEO対策を徹底していたからです。

本件の問題の核心は、クソコンテンツをただ単にSEOのテクニックによるのみで媒体価値を上げ、収益を挙げていたことです。本事件の著作権問題というのは結果解ったことであり、DeNAへの訴訟のきっかけでしかありません。本当は事業者としての倫理を問われている問題なのだといえます。

 

倫理観を問われた事件としてもう一つあるのが、「死にたい」とGoogle検索をすると「【死にたいと思ったときに試して欲しい7つの対処法】」というWelqの記事が表示され、最終的に転職サイトへのアフィリエイト広告誘導される、というものがありました。

「真剣に悩んでいる人から、こんな方法で金を取ろうとするなんて!」という批判を浴びていました。

出典:「死にたい」検索トップの「welq」の記事、DeNAが広告削除 「不適切」指摘受け - ITmedia ニュース

DeNAの3つのSEO戦略

DeNAのキュレーションメディアのSEO戦略は大きく3つあったように思います。

                  f:id:tatsuyakaiji:20161217164622j:plain

(1) 多大な分量のコンテンツを作成すること

同社はライターに対して1記事8,000文字というのをルール付けていたと言います。

これには2つの理由があって、1つはGoogle検索エンジンが分量の多いコンテンツを優先的に検索上位に持ってこさせるように作られていたからです。

もう1つはユーザーの検索する特定のキーワードを文章内に散りばめさせることで、Google はキーワードが多く書かれているコンテンツの関連性が高いものと判断し、できるだけ検索結果上位に持ってくるという理由です。

さらに、文字の分量に応じてライターも多く報酬を貰えることから、ライターとしてもそれだけの分量を書くインセンティブがありました。

 

(2) 記事をメチャクチャな頻度でUpdateを行うこと

 Google は、Google botと呼ばれるクローラープログラムを使って世界中のウェブサイトの情報収集をしています。そのクローラーが自身の検索エンジンの対象となるウェブサイトを巡回し、状況を常にUpdateして、良いコンテンツを上位に持ってくる、ダメなコンテンツの順位を下げる、等の判断をしています。

Google botに巡回をしてもらわなければ、自身のサイトの検索結果順位を上げてもらうことが出来ません。

Google botはコンテンツのフレッシュさと更新頻度に反応して巡回を行うことが知られています。

そのため、猛スピードで大量の記事を一気に作成すること自体がSEOに効果があるということをDeNAは見出しました。DeNAではGoogle botの気を引く為に、クラウドソーシングプラットフォームで大量のライターを雇い、1日100記事ほどの記事を作成するまで至っていたそうです。

 

(3) 「ユーザーニーズ」に限りなく答えた記事を作成すること

今ではAdsenseの利用をしなければ利用が制限されていますが、Googleのキーワードプランナーで検索のキーワード(またその組み合わせ)の検索ボリュームを見ることが出来ます。

例えば、あるテーマに関連するキーワード(例えば健康関連であれば「腰痛 治し方」等)がどれだけユーザーが閲覧するポテンシャルがあるかということに当たりを付けることができるのです。

 

同社は、ユーザーが常に検索している=ニーズの高いキーワードの記事を大量生産し、更に多くのユーザー誘導を行っていました。これは、ユーザーのニーズ自体に純粋に応える形でコンテンツが作られてきたとも言えます。

しかし、書いてある内容が事実無根のクソコンテンツであったため、結局はダメダメということになりました。

(出典:『DeNAのウェルク(Welq)のSEO対策を調べ。どうしてグーグル先生は騙されたのか?』DeNA他キュレーションメディアが起こした "事件"は、検索エンジンが資本主義に負けたということ

SEO対策の仕掛人 村田マリ氏

そもそもDeNAがキュレーションメディアを新規事業の柱に据えようと決断したのは、渦中の村田マリ氏のiemo、女性向けファッションキュレーションメディアMERYを運営するペロリを買収したときでした。

jp.techcrunch.com

なんと買収額は総額50億円程。DeNAの保有キャッシュが2014年9月末時点で700億円強だったので保有キャッシュの1割近くも本事業に投資をしていたことになります。

(出典:DeNA2015年3月期第2四半期決算短信

各社ニュースサイトでも言われているように、今回の事件には村田マリ氏の関与が非常に大きかったと考えられます。

何故なら彼女が問題のSEOノウハウを持っていたからです。従って、忌むべきはDeNAでもキュレーションメディア一般でも無く、村田氏のSEO対策ということでしょう。

 

確かに同氏のSEO対策は本当に見事なものだとも思います。相当に頭が良いのだと思います。

ドイツ銀行ゴールドマン・サックスは、過去に元本返済可能性の極めて低いMortgage Backed Security (MBS)、いわゆる "サブプライムローン"をあの手この手で売りさばいて市場規模を拡大して自分達の利益を享受していました。その結果、多くの不幸が生まれたことは記憶に新しいでしょう。

たとえ頭の良いやり方でも、やはり法律違反や過剰なSEO対策でのユーザーからの不信は、事業の失敗にもつながるものと言えるでしょう。

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3. キュレーションメディアは悪か?既存マスメディアとの違いは?

既存メディアの各社では、この事件をきっかけにここぞとばかりにキュレーションメディアを叩いています。

ダイヤモンド・オンラインでは著作権侵害に関わる被害に就いて糾弾しているようですし、テレビのニュースを見ていても今回の事件をきっかけに「やはりネットの情報の信憑性には限界があるんでしょうか・・・。」「そもそも書いているのが素人のライターなのだから、情報の確からしさなんて考えてみれば疑わしい」といったコメントであふれています。

 しかし今回の事件の批判は、発端となった特定の会社の倫理感に対してするべきであって、キュレーションメディアそのものに対してするのはお角違いであると思うのです。

 

テレビのニュース自体もいうなればキュレーションメディアです、ネットを使っていないだけで。テレビのニュースでも、自分たちが上げるテーマに基いて取材もするし、新聞記事を集めて、それぞれキャスターやゲストが意見を言う仕組みになっています。

つまり、冒頭のキュレーションメディアの定義に従えば、「コンテンツ作成者独自の切り口から情報を収集し、取りまとめしたサイト・メディアのこと」なので、コンテンツ作成者がテレビ局番組制作部隊であるというだけです。 

なので、彼らがキュレーションメディアをディスり、ネットニュースの信憑性を疑っているのは、「自分たち既存メディアの情報は信頼されるべき情報だ!」と訴えたいだけであるのです。

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(画像出典:フジテレビ とくダネ!

 

4.キュレーションメディアと情報発信の民主化

私はネットのキュレーションメディアは、個人にも情報発信をすることが出来、そしてそれで収益を得られるという意味で、これまで情報発信を独占していたテレビ等の既存メディアから、独立して勝ち取られたものだと思います。

これは言い換えると、情報発信の民主化がネットのキュレーションメディアによってできるということです。

ネットネイティブ世代である私の実感として、皆さんもネット上の情報に信憑性が多少疑わしいことはわかった上で読んでいると思います。皆さんもネットで何か検索した時、その情報を本当に100%信頼しているでしょうか。

我々は引き続き自分自身で情報の真偽は見極めなければならないわけですが、マスメディアのような既存のジジイメディアにとやかく言われる筋合いはないわけです。

自分で調べて、「この情報は合ってそう」「これは違うんじゃないか?」と自分で考え、そしていいアイデアが浮かび、自分で発信したい情報もアイデアもあったら、それを自分のSNSでもブログでも書けば良い。

 

民主的な情報プラットフォームとしてのキュレーションメディアは、もう少し賞賛されても良いのではないかと思います。

 

飽くまでもDeNAがやり方を間違えていただけなのです。

最高の現場リーダーを作る:愛され指導医になろうぜ、志水太郎

愛され指導医になろうぜ、志水太郎

著者のキャリアと総合内科

著者は現役の総合内科医である。

指導医が、どうすればメンバーの信頼を得てチームの性能を最大化し、彼らの力を効果的に引き出せるか、というのが本書の主題だ。

 

ここで、総合内科に関して簡単に説明する。

日本の医師は、専門家Specialistが多いと言われていてる。例えば、循環器内科、消化器内科、心臓外科、といった、「臓器別」の専門家である。それに対して総合内科とは、科にこだわらず、内科疾患を幅広く担当する。

日本では、この総合的な(Generalな)医師、というのは元々あまり多くない。大体が「俺は〇〇の専門家で、さらに他の内科疾患も(大体)診ることができるぜ」と言った感じである。しかし昨今、高齢化の影響で、患者が抱える医療的な問題点が、一つの科だけではカバーできなくなってきた。 

現代の日本の医療現場では一人の患者が、心臓病、腎臓病、糖尿病、関節症など、多くの科にまたがる疾患を、複数抱えているのが普通である。このような医療現場では、ひとつひとつの臓器の専門家ではなく、総合的な診療能力を持つ医師、俗にいうジェネラリストが求められるようになってきたのだ。

 

著者は日本の市中病院で総合内科医としてのトレーニングを積み、米国公衆衛生大学院MPHを修了し、豪州でMBAも取得した。その後は国内の市中病院を中心に総合内科の研修プログラムの立ち上げを行なっている。

臨床医としても国内でアルバイトをしまくり、200近い病院で仕事をした経験を持つという。そういった活動を通し、次世代のリーダーとして強い求心力も持つ人物として、頭角を現してきた。

 

医者に求められるリーダーシップとは何か

「リーダーとしてチームをまとめていこう」そのようにリーダーシップを意識したその瞬間から、リーダーの仕事は始まる。

例えば、医師が自分一人で、孤立無援の当直を考えてみる。確かに医師は一人しかいないが、例えばそこにナースが一人加われば、それは既に立派なチームである。そこに事務職員、薬剤師などが加われば、すでに一種の他職種医療ユニットとなる。 

医師のリーダーシップは、大きな大学病院・市中病院の上級医だけに求められる能力ではなく、現実的にどんな場所でも必要なものと言える。

 

では、どのようにメンバーの信頼を勝ち得ていけば良いのか。

著者は、一番重要なことは「みんなが協力してくれるからこそチームが維持・機能できるという感謝の気持ち」であると説く。

リーダーからの感謝の言葉や気持ちが、「この人と頑張っていこう」と他のメンバーとの結束を強めるのである。迷った時はいつもこの基本理念に立ち返ろう。

 

行動コントロールVS結果コントロール

チームメンバーのマネジメントには、大きく分けて二つの方法がある。

行動コントロール結果コントロールだ。

 

行動Actionコントロール

メンバーの行動を細かくルールで規定・標準化し、指導する。この指導方法では、指導されている側があまり思考回路を働かせる必要がないが、言われたことに従っているだけで一定のクオリティは確保できることが大きな利点である。

若手や経験の浅いメンバーに向いており、手取り足取り指導することで、安定して仕事を遂行することが可能となる。

結果Resultコントロール

逆に、メンバーに大目標だけ指示し、実際の仕事のやり方については各人に任せる。そして、メンバーが出した結果を評価する方法である。 

これは、各人の自発性が求められるが、ある程度スキルの上がったメンバーでは自尊心が満たされ、仕事も早く進む。手取り足取り指導するよりも、自主性に委ねたほうが、結果的にチーム全体のアウトプットが良くなることもある。 

結果/行動 コントロールの割合

なお、これらの二つの指導方法は、どちらか一つ選ぶものではなく、各メンバーごとに、割合を調整して適用するものであることに留意したい。基本的に、経験の浅い研修医には、行動コントールの割合を増やす。対して、後期研修医などある程度能力・経験があるものは、結果コントロールの割合を大きく設定する。 

メンバーごとの結果/行動コントロールの割合は、医師としての学年で規定されるのではなく、実際の技術レベルで判断することが重要だ。

 

メンバーの能力の向上に合わせて、行動コントロールから結果コントロールの割合を増やしていく。そして逆に、仕事の内容が高度すぎてそのメンバーでは満足に行えない場合は行動コントロールの割合を増やす必要がある。

なお、逆方向のシフトは、本人の自尊心を大きく傷つけ、モチベーションが下がってしまう。本人にバレないように行う必要がある。

 

出来の悪いメンバーへの接し方

3年目になっても、相変わらず1年目に近い程度のパフォーマンスのメンバーも存在する。しかし、そういったメンバーを「同学年より下」と評価し「出来の悪い研修医」という烙印を押してしまって良いのだろうか。

そのようなレッテル貼りは、メンバーに不要な劣等感を産み付けるだろう。今後10年以上続くであろう、医師としての成長曲線。その時点での平均からの上や下、という単一な情報で評価するのは、あまりに短絡的だ。

 

そのメンバーが伸び悩む理由。それは、要領かもしれないし、環境かもしれない。しかし、本人なりに悩みながら、上級医からのストレスに耐えながらも、他の人に追いつこうと頑張ってきたのだ。

そんな人達を応援こそすれ、悪い評価をして突き落とすことなど、どうしてできるのか。成長の伸びは各人で違う。それぞれの個人レベルの変化値に注目し、それが最大化するよう努力するのが、本物のリーダーだ。

 

モチベーションについて

モチベーションには、給料・ポジションといった外発的な要因と、充実感や達成感といった内発的な要因の2種類がある。モチベーションが高まると、一般的に仕事のパフォーマンスは高まる。各人のモチベーションを高めることも、リーダーの大事な仕事だ。

 

しかし「モチベーションの有無は仕事のパフォーマンスの根幹を為すものではない」と著者は考える。モチベーションの有無にかかわらず、仕事をしなければならないこと多いし、モチベーションがないと言いながら、仕事はきっちりやる人もいくらでもいる。「モチベーションの有・無」と「仕事をやる・やらない」ということは、別の軸の問題である。

モチベーションが低下したメンバーは、仕事のパフォーマンスに悪影響を起こすことがある。その原因が個人的な私生活にあるのであれば、介入はほぼ不可能だが、リーダーの行動がマイナスのモチベーションを引き起こすことだけは、絶対に避けなくてはならない。

 

マネジメントの観点から言えば、リーダーはメンバーの仕事の質・効率を上げるため、各人のモチベーションを最大のアウトカムとして設定するのではなく、まずは具体的な業務内容の改善に最大の注力をするべきであろう。

「その仕事がうまくいけば、患者にどうメリットがあるか」また「どうすれば仕事の効率が上がるのか」というプロセスにこそ、焦点を当てて教育をするよう心がけよう。

 

愛され指導医の一日

指導医は忙しい。

研修医の見落としがないか目を光らす、検査の予定をチェック、研修医が精神的に疲れていないかのスクリーニング、他科や他職種との軋轢の解消、教育のためのコンテンツ作りなど。やることは膨大である。

そのよう毎日の中で、個人的なインプット(自分のための勉強)やアウトプット(論文、書籍、記事の執筆など)の時間をいかに確保するかが、1プレイヤーでもあるリーダーとしての「伸びしろ」を決定する。

自分の時間をどのように確保していくか、つまり自由にできる時間をいかに確保するかが、重要となってくる。

ここで著者の一日のスケジュールを抜粋しよう。

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私は短時間睡眠ができないので、このスケジュールになっている、とのことだ。4−5時間睡眠は、平均と比較したら、相当な短時間睡眠ではあるが。

著者は、最も安定して集中できる時間帯は、早朝であると考え、その時間に、個人の勉強や執筆を行なっている。

さらに時間効率を高めるため、 以下のような工夫をしている。

  • 食事は外食or出前で済ます
  • 移動は手が塞がるので車はNG。空いている時間帯の電車推奨
  • エレベーターの待ち時間に勉強する。スマホの問題集。
  • テレビなし。受動的な時間を減らす。
  • 飲み会は新しいチームが決まった時の決起集会に限定
  • 仕事上の信頼は、仕事で作る

 

 

 

 

誰もが、このストイックなライフスタイルで生活できるとは考えられないが、一つのロールモデルとして、参考になるのではないだろうか。特に、朝に創造的な活動時間を設定する、というのは、他の書籍でも度々見かける主張である。是非参考にしてほしい。

 

著者の情熱と医者の世代交代

僕はこの本を初めて読んだ時、

「ついに若手からこんな本が出たか!」と雷に打たれた。

 

今でも、医者の教育は前時代的な、徒弟制度に縛られている。

しかし、それでは、次世代を担うリーダーは輩出できない。

著者の壮大なビジョンを知った衝撃は、とても大きい。

 

最後に、あとがきを抜粋を紹介する。

この本の読者のあなたも、今まさにリーダーとして、または個人として困難に立ち向かっている最中かもしれませんし、いつか挫折を経験するかもしれません。私はその戦いの機微を理解します。だからこそ、日々頑張って戦うあなたを私は全力で応援しています。

 

この本は次世代のリーダーのために書きました。この本が明日のリーダーに役立つことを心から願っています。

 

関連記事 

アメリカ人男と結婚/付き合っている日本人女子の頭の中はどうなっているのか

僕の知り合いには、アメリカ人男と付き合ったり、結婚したりしている日本人女子が数人いる。

英語で苦労している、という共通点のある彼女らとの会話は、なかなか興味深い。

 

そうやって彼女らと接していく中で、彼女らには大きく2種類の人種がいることがわかった。

今回はそのことに関して論じてみたい。

 

英語がペラペラの日本人女子

彼女らは、夫・彼氏との日常会話はすべて英語で行なっている。

なぜなら、アメリカ人は日本にいても、ほぼ英語しか喋らないからだ。

たくさんのアメリカ人の友人もいる。

そんな彼女らの発音はスーパーNativeであり、ほぼ完璧である。

 

そういった女子達は、高校生までなんとなーく白人に憧れる普通の女の子であった。

その後、短大や専門学校に行き、「まぬけ〜ぼちぼち」のあたりで楽しく過ごす。

 

そして、ひょんなことから、アメリカ人と交流を持つ機会がある。

相手は、交換留学生だったり、英語教師だったり、在日米兵だったりする。

 

アメリカ人男は、アジア人より白人が好きなので、日本人女子に手を出す奴は、

大体がロクデナシである。 

 

こうして「平均以下のアメリカ人男子」「別に英語は得意ではない日本人女子」のペアが完成する。

 

さすがに、付き合ったり結婚すると、相手と会話しない訳にはいかない。

一緒に英語のテレビを見たり、友達や上司の悪口を言い合うこともあるだろう。

そうして、それまでは特段英語ができなかった日本人女子の英会話力は、急上昇する。

 

こう言った変化を経る人は、「自己主張が強く、おしゃべりな人」が多い。

彼女らは、少なくとも「スピーキング・リスニング」に関しては超速でマスターする。

 

アメリカ人と結婚しているのに、全然英語が喋れない人

逆に、アメ人と結婚して長いのに、英語がほとんど喋れない人達もいる。

日常会話の要件を伝える、ぐらいはなんとかなるが、それ以上の抽象的な話などはできない。

3歳ぐらいの子供が、親の通訳をしていることがある。

 

ワンナイトラブが、あま〜い英語(何を言っているのかわからない)で、成立するのはわかる。

しかしその後も、そのまま継続しておつきあいし、結婚まで発展しているのに、

英会話力が変化しない人たちが存在することには、仰天したものだ。

「こんなんで、一体どうやって生活しているのだ??」

 

しかし、これは僕の「結婚」に対する理解が浅かった、と言った方が正しいだろう。

「パートナーや結婚相手と、深い話をする」ということ自体が、そもそも一般的でないのだ。

いかに多くの女子が、雰囲気やノリで男を選んでいるのか、を端的に示している。

 

こう言った人達は、きっと相手が日本人でも、相手のことはほとんど理解しないままなのだろう。

そのような付き合い方をしている女子は、「雰囲気に流される大人しい人」が多い。

英語力全般が低いまま、徒然なるまま生きているのだ。

 

アメリカ人夫も、言葉がイマイチ通じない奥さんに相談などするはずもなく、

アメリカ人同士で、勝手に楽しくやっていることが多い。 

 

彼女らの英語力に使い道はあるのか

前者に属する人の英会話力は、海外進出を目指す日本人ビジネスマンからしたら、まさに神レベルと言って差し支えがない。

そういったアメリカ人男の彼女/奥さんの日本人は、堪能な英語を駆使し、バリキャリ女子として活躍できるのではないか?

 

そんな僕の期待は、大きく裏切られた。

 彼女らのTOIECの点数を聞いてひっくり返ったのだ。

 

なんと600点

リスニングはほぼ満点らしいのだか、リーディングが全然出来ないのだ。

 

それは、そもそものベースの頭がバカすぎるからである。

彼女らの多くは、「めちゃくちゃアホ」なのだ。

頭のスペックレベルがクソ低いのである。

 

多くの意識の高くて英語が喋りたい日本人は、リーディングから勉強を始める。

その後、実際に外国人とコミュニケーションをとる必要に駆られ、

渋々スピーキング・リスニングのトレーニングをすることになる。

 

しかし、世の中には、逆のパターンの人もいるのだ。


そういった「スピーキング・リスニング」から英語をマスターした人達は

もし読み書きを真面目にトレーニングしたら、どのくらいのペースで習得できるのか

というのはとても気になる。

おそらく、座学ばかりで吸収するより、圧倒的な高スピードで、学んで行くのではないだろうか。

 

しかし、ベースの頭がこんなに悪いと、それも期待できそうにない。

 

 

いやー、本当に面白い存在だなぁー。

名著「人を動かす」に学ぶ、チーム医療を実現する部下との接し方

みなさんこんにちはTatsuyaです。

 

僕は現在3年目の医師である。

僕は普段から「できるやつオーラ」を出しているので、同期の相談に乗る機会が多い。

3年目になった我が同期から受ける相談で一番多いのは、部下との接し方の悩みである。

正確に言うならば、「部下が使えないという愚痴」である。

 

3年目にもなると、マネージメントや教育もある程度行う必要が出てくる。

部下2−3人を抱えて、自分が中心となって患者の管理を行うようになる。

言われたことをこなしていればよかった初期研修医とは違い、

自分が中心となってチームを率いる必要が出てくる。

 

僕は、学生中に部長をやったり、勉強会を運営したりしていたので、

元から部下や後輩と接するのは好きである。

なので、そういったことを苦労と感じたことがなかった。

そのようなマネージメント力が、他人にあえて誇るようなものではないと思っていた。

 

しかし、世の中的にはどうもそうではないらしい。

今回は、僕が普段意識していることと、これまで経験した事を合わせて論じてみたい。

 

まずはBIBLEの紹介 

Dale Carnegie:How to Win Friends and Influence People (英語版、なんと99円!)

デール カーネギー:人を動かす(日本語版)

 

自己啓発本の祖、カーネギーさんの本である。

 

他人にどうやって影響を与えるかというようなことが、

豊富な当時の実例を元に、極めてわかりやすい英語で書かれている。

書かれたのは何と1937年

その内容は普遍的で、今日でも全く色褪せない。 

内容をものすごーく簡単にまとめる

1. 人は「自分が正しい」と思っているので、批判や頭ごなしの修正では、行動を変えてくれない

2. なので、まずは褒めろ

3. 他人を修正するときは、遠回しに行い、質問などで本人が自ら気づくように仕向ける

 その際、まずは自分のミスについて語るべし

4.変わったらクソ褒めろ

 さらに、部下について、他人に自慢しろ。

 

というような内容である。

基本的には他人の行動に肯定的な態度を貫き、自発性を引き出す事を目指すのだ。

この本を一読すれば、下の内容が、ほとんどこの本の内容の焼き直しであることがわかるだろう。

余談だが、”win friends”は「友達に勝利する」と言う意味ではなくて、

「友達を作る、友情を獲得する」と言う意味らしい。

 

総論:部下とのコミュニケーションを考える

1. 部下が「使えない」ことを前提として考えよ

よく3年目になった医者から聞くのが、「初期研修医がマジ使えねぇ」と言うdisである。

医者のピラミッドを作ると、当然一番下は初期研修医である。

 

初期研修医は学生を卒業したばかりの文字通り新米で、ほとんど何もできない。

お願いしたことをこなすことすら満足にできない。点滴や採血といった手技も下手だ。

 

「本当にあいつ動かないんだよね」「あいつらやる気なさすぎ」。

自分の昔を棚に上げて、部下をバカにしている医者は案外多い。

 

しかし初期研修医が「使えない」のは当然である。

最初から一人前であれば、そもそも研修なんてしなくて良いのだ。

 

 期待するから、腹がたつ。

「医師免許を持っている普通の人間」以上の期待を抱いてはいけない。

 

2. 部下は自分の敵ではなく、味方であり、育てるべき対象であると考えよ

よくあるのが自分の部下と敵対しているケースだ。

チームの一員、と言う意識が希薄なのだ。

 

目標はチーム全員の能力を有効活用し、患者への最大の医療を届けること。

こういった理念やファンダメンタルズは、軽視されていることが多いが、重要である。

 

迷った時は、いつもこの基本に立ち返ろう。 

 

3.基本的には褒めまくり、自主性を引き出す努力せよ

1.2を自分のマインドセットとする。

そうして日常業務においては、「褒めて伸ばす」基本戦略とする。

 

意識障害の患者にいきなりMRIを施行しようとしている研修医がいたら、

「何で最初にMRIなんだ!先に除外するべき疾患があるだろボケナス!」と思うだろうが、

「そうだね、確かにMRIでわかる疾患も多いよね。

 でもまずは、基本的なところから調べて行こうか」と優しく諭すことが重要だ。

 

一番良くないのが、後輩のアセスメントを頭から否定し、ディスるだけの指導である。

これでは研修医は萎縮し、自分の頭で考える事を疎かにしてしまう。

 

基本的には一回受容し、遠回しに正解ルートへ連れて行く戦略が良い。

 

各論:キャラ別ワンポイント講座

とは言っても、扱いにくい部下、と言うのは確かにいる。

ここでは各論的に考察を深めて行く

1.「女医」

これは一緒に働く上で、避けて通れない存在である。

全員がそうだとは言わないが、

女医は基本的に気分屋で、感情的であり、プライドも高く、拗らせやすい。

 

まず女医さんは「自分の敵/味方」の線引きを、ものすごくクリアに行う存在である。

絶対に、自分を敵サイドに組み込ませてはならない。

 

そのためには、ひたすら女医さんに肯定的なスタンスでいる必要がある。

直接的な批判や叱責はご法度であり、修正もどうしても避けられない場合をのぞいて、行わない。

 

修正するにしても相手の顔色を伺いながら、ものすごく遠回しにやろう。 

間違っても、頑丈な元ラグビー部の部下相手の時のように

てめえちゃんと検査結果確認してから帰れや(゚Д゚)ゴルァ!

オーダーだけ出して結果見ないとか医者なめとんのかあ!?

みたいなノリで女医さんに接してはいけない。

 

あと、女医さんは、男医者の仕事以外での行い特に恋愛)も、

その人の「仕事上の評価」の対象に組み込む性質があるので注意が必要である。

あなたにセフレが5人いようが、必ず、

「彼女を大事にしている非モテコミット気味の人」「頼れるお兄ちゃん」「イケメン」

のどれかに分類されるように心がけよう。

 

意外なところで足元をすくわれないよう注意だ。

 

2.「自分より年上で、かつプライドが高い」

プライドが高い年上の人と接し方は、女医さんとの接し方に似通った点がある。

 

そう、一番重要なのは、その人のメンツを尊重すること。

自尊心を満足させるように誘導していく事を心がけよう。

 

3.「モチベーションが0な人」

これも難しい。

修正しようにも、向こう側からの自発的な行動や発言がないので、取りつく島がない。

こう言った人に「やる気出せよ!」と言ってやる気を出すことがないことは、

ここまで記事を読んでくれてきた読者なら自明であろう。

 

自主性を重んじることが基本であることに変わりはないが、仕事の線引きは重要だ。

ここからここまでは、君の仕事。だからここまでは必ずやりなさい

と境界線をはっきりさせるのだ。

 

そうして、ある程度仕事をやってくれるようになれば、それを取っ掛かりとし、

いつも通りの「褒め」による介入を行う。

あとは一緒である。

 

おまけ:飲みニケーションやオフタイムの付き合い方

これは僕自身の性格も多分に関係するが、基本的にはほぼ無しで構わないだろう。

チーム結成時と解散時に、飲み会を行うことはあるが、それ以外には推奨しない。

 

僕は、人間的に個人的に仲良くなりたい場合にのみ、仕事外の付き合いを設定している。

 

結語:部下を育てる根元的なモチベーションは何なのだろう

このように、部下を育てる事、チームを円滑に回す事、には多分な労力が必要となる。

気遣いもしなきゃいけないし、頑張っても部下が全く成長しないこともあるだろう。

 

使えない部下を介在させて仕事をしていると、

まるで繊細な和食を、大きなマジックハンドを使って食べているような気分に陥る。

 

それでも僕は、部下や後輩と接することが好きだ。

なぜなら、成長した部下は「チーム達也の一員」だと考えているからである。

 

僕から受けた影響で、他人が変わり、世の中に影響を与える。

その可能性を考えたら、ワクワクしないだろうか。

 

この記事により、円滑なチーム医療が発展する一助になれば、望外の喜びである。

医者の懐事情を赤裸々に綴る

医学部6年間を卒業したら、次に2年間は初期研修医という身分になる。

初期研修は、国のシステムなので、医学部を卒業して国内で医師として働きたい場合は、誰もが2年間は最低やらなくてはならない。その期間中は、研修先以外での仕事(通称バイト、非常勤)は禁止されている。

これは、昔の研修医の給料が5万しかなかった時代に、当時の研修医がバイトをしまくり日常業務に支障をきたし、問題なったという経緯があるからである。

現在の初期研修の給料はだいぶ上がり500−700万ほどであり、普通に生活する分には全く困らない。

そして初期研修が終わると、一旦勤務先との契約が切れて、再度就職活動をしなくてはならない。就職先は、元々初期研修を行っていた病院や、出身大学の大学病院医局などが多いようだ。

そして医者3年目からは「後期研修医」になる。

そして後期研修医から、「バイト、外勤、非常勤」が解禁となる。今回はそのことに関して、僕の現在知っていることを記していきたい。

 

一般的に、大学病院よりも市中病院の方が給料は高い。大学で年収500万、市中病院で800万あたりが相場のようだ、これだけ見ると「金が欲しいのであればやはり市中病院か」とお考えになるかもしれない。しかし、大学病院には大きなからくりがある。外勤である、

外勤とは、その医局の支配下にある近隣の病院に、半日〜一日だけ派遣されて働く、というシステムである。その時の給料は外勤先から直接医者に支払われ、大体半日で4ー5万ぐらいといった相場だ。

頻度は、各医局でかなり差があり、月に1−2回だったり、週3回だったりする。つまり頻度が多ければ外勤だけで、月に40−60万もの給料が振り込まれるのである。

これにより、大学病院の後期研修医の基本給と外勤費用を合わせた合計は、年収にして1000万を越えることが珍しくない。これは、医者3年目、27歳の時の給料である。

逆に、市中病院での後期研修は外勤システムは基本的にないし、仕事がめちゃくちゃ忙しいことが多いので、基本給が高くても、そこから収入を増やすことは難しい。「大学は給料が安い」というのは、誤りなのである。金が欲しくてあんまり激務したくないのであれば、大学病院がオススメだ。

 

なお、医局や病院が斡旋してくれる勤務先ではなく、自分で求人を探し働くということも可能である。通称バイだ。

普段の仕事を休むわけにはいかないので、基本的に土日や祝日しかバイトはできない。大体土曜日の夜にバイト先に行ってそのまま泊まり、日曜は全日病院、月曜朝まで、という求人が多い。それで15−20万+交通費というところだ。

某大学病院で精神科後期研修医している知り合いは、平日は9時出勤、17−18時上がりというぬるま湯研修を行なっている。

このスケジュールであれば、平日の泊まり込みバイトも入ることができる。もちろん、バイトが忙しい場合だと夜に寝れず翌日のパフォーマンスに支障をきたす。なので、暇なところを探す。

当たり前だが、暇なアルバイトをたくさんやっても、自分の医師としての戦闘力は上がらない。時間を金(時給五千円ぐらい)に変えているだけである。しかし、どうせ家に帰っても勉強して寝るだけなので、泊まるところを変えるだけで金がもらえると考えれば、全く悪い話ではない。彼はそれで、大学病院の後期研修医でありながら、年収1200万を実現させている。

 

ところで、こういった外勤やバイトは、ほとんどの場合、医者としての実績があろうが若手であろうがと時給は変わらない。医者三年目のペーペーでも、医者20年目のベテランでも、外勤やバイトからもらえる額は同じなのだ(基本給は増える)。

そう考えると、一番医者として金銭的に美味しい時は、3年目以降〜30代前半の家族ができるまでという、比較的若い頃なのではないのだろうか。 

 

若ければ若いほど、体力や休日の自由がある時こそ、稼ぎやすい。

当分は若さと体力を武器に、自分の時間を売って稼ぐこととしよう。

お医者さんの時給はなかなか良いのだ。

 

今後は、仕事の実際について、書いて行きたい。

 

 

(2016年12月9日追記)

「市中病院よりも大学病院の方が、稼ぎが良い」という内容であったが、これは条件付きであった。「市中病院では+αのバイトは不可能」という前提で書いていたが、よくよく考えてみれば、仕事量が少ない田舎の市中病院など、それこそ腐るほどあった。

 

僕は「意識が高い医者」なので、そう言ったヘタレな職場のことを全く考慮していなかったのだ。仕事量が少ない市中病院であれば、エクストラのバイトも可能である。

 

実際に僕の知り合いで、市中病院の外科で後期研修をしている奴がいるが、基本給が月に手取り60−70、それに加え、療養型病院での寝当直(その病院で寝ているだけで、基本的に仕事はしていない)を月に2−3回入っているとのことであった。そこからの収入で+20万ほどの収入があるそうだ。

 

こういったライフスタイルであれば、「暇な市中病院」が一番稼ぎがいいことになるな。

洋書を読むにはKindle端末、Kindleアプリ、紙の本のどれが適しているのか

こんにちはTatsuyaです。

先日、イーロンマスクの伝記を読み終えた。

原)Elon Musk: How the Billionaire CEO of SpaceX and Tesla is Shaping our Future,

  Ashlee Vance

翻)イーロン・マスク 未来を創る男、アシュリー・バンス 

 

ちょっと魔がさして、原著(英語版)を選んでしまった。

これがえらい難しくて、通読するまでかなり時間がかかってしまった。

理由は、僕は医者なので、全くビジネスのことがわからないから内容が理解しにくいというのが一つ。
もう一つは、文中に出てくる単語のレベルが非常に高い、というの2点だ。

通読し終わっても、あんまり内容を覚えていないというのも、なんとも悲しい。


ところで、洋書を読む媒体は、何が適しているのだろうか。
今手もとにあるのは 

である。

それぞれのメリットデメリットを考えてみよう

 

Kindleアプリ(PC、iPhone

一番大きな利点は辞書が瞬時に使える点である。
これが秀逸で、指やカーソルで単語をなぞるだけで、一瞬で辞書が表示される。

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デフォルト辞書は変更も可能で、英和辞書はもちろん、英英辞書も設定できる(画像は英和)。

 

洋書を読む際の辞書に関しては、英英にするか英和にするかは賛否両論ある。

英英辞書だと、definitionの中の英単語がわからないことがあり、二度手間になって面倒くさい。

英和だと日本語脳から抜け出せない。

 

まあこの辺は、様子を見ながら適宜変えてみよう。

後述するが、PC/iPhoneKindleでは、調べた単語が単語帳に自動登録されることはないし、単語帳の参照もできない。

何よりPCとiPhoneの難点としては、誘惑が多く、すぐに他のことをしたくなってしまう。

英語を読むという作業は、それだけでもかなり負担がかかる作業で、深い集中が不可欠なのだ。

 

Kindle端末(Paperwhite)

誘惑がないので、集中という意味ではKindle専用マシンが有利だ。

画像が液晶ではなく、E-inkという目に優しい表示なのがありがたい。

 

もちろん辞書機能も内蔵されており、単語をタッチするだけで表示される。

しかもKindle端末による辞書は、調べた単語を自動的にリストしてマイ単語帳を生成するという神機能がある。

 

しかし一つ致命的な難点がある。「辞書の表示スピードが遅い」のだ。

これは、難しいけどちゃんと理解しないといけない本、要するに辞書を引きまくる本の際はかなりのネガとなりうる。

体感的には、 PCやiPhoneの2−3倍時間がかかる。

 

単語帳機能に加えて、Kindle端末には、Word Wiseという新機能がある。
これは、難しい単語をKindleが自動的に調べ、その単語の上にルビとして類語や意味をあらかじめ表示させる機能である。

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「難しい単語の基準」も、任意に調整が可能である。

ただ、難しさの基準は曖昧で、「なんでこの単語にルビがあるのにこれに無いんだ!」

なんとことはしょっちゅうである(僕のVocabularyが偏っている可能性も大) 

 

これは革新的な機能だと思ったのだが、一つ問題があった。

それは、本来の単語を読み飛ばすようになってしまう(あまり意識しなくなってしまう)という点である。


作者の文章の味をそのまま受け取ることと英語学習が原著を読むメリットなのだとしたら、だいぶ勿体無い話だ。

なので僕は、Word Wiseは非表示としている。

 

洋書を読むのに最適な端末とは?

理想を言えば、スピーディな辞書表示と単語帳機能が両立されれば良いわけだ。

使ったことはないが、VoyageやOasisといった上位機種ではどうなのだろうか。

 

またちょっと用途が異なるかもしれないがKindle FireというタブレットはCPU機能がだいぶ優れている印象である。

Kindle端末の機能は基本的に全て使えるようだ。

E-inkでは無いし、誘惑も多いが、一考に値する。

もしまた機会があればレビューしたい。

Kindle Fire タブレット 8GB、ブラック

 

古き良き紙の本

紙の本はその逆で、辞書を引くモチベーションが下がるが、集中しやすい。

あと、周りに「僕は洋書読んでますよアピール」もできるので、モチベーションが上がる。

人との比較の中でしか自分の価値を認識できない僕たちにはぴったりであろう。

勝ち組を目指すなら、とりあえず中高で留学させておけばいいのではないか

どうも達也です。

子供のいない僕が、安直な教育論を語ろうと思います。

 

僕は幼少の頃にアメリカに数年間住んでいたことがあります。

おかげさまで、元々そこそこ英語はできました。

具体的にいうと、追加の勉強は全くなしでセンター英語満点。

模試での英語の偏差値は75〜でした。

TOEFLは100点以上あります。

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現在はアメリカ人ばかりの環境で、英語を読み・書き・会話、全部使ってます。

そこでは、本気で海外を目指している日本人の方とも大勢お会いします。

彼らは、ものすごく努力されています。

しかしそれでも、いや、だからこそ、

「幼少の頃に英語を使ったことがある」ということの英語への影響は死ぬほど大きい」

ことを痛感しています。

越えられない大きな壁があるのです。

 

「ちょっと英語で日常会話が出来る」ということと、

「英語のみの環境で仕事ができる」、ということには、大きな溝があります。

 

ご存知の方も多いでしょうが、英語さえ完璧なら、慶應大学や早稲田大学には、

一般的な受験勉強をほぼしないで入学できます。

 

僕の知り合いには帰国子女がたくさんいます。

彼らは、中高とほとんど遊んでるだけでしたが、

高校3年生の春にちょっと自己アピールと面接の練習だけ行い

そうやって高偏差値私立大学に入学してしまいました。

普通の人が、中学受験、高校受験、大学受験と、人生をかけて勉強してきたのとは対称的です。

 

あ、僕自身は国公立医学部なので、英語以外の科目も必死に勉強しましたし、

センター試験や二次試験も受けましたよ。

 

話は戻りますが、そうやってヘラヘラと高校を卒業し、晴れて良い私立大学へ入学。

学中はサークル・バンド・スポーツなどに適当に打ち込み、

就活ではあっさりメディア、商社、外資系企業への就職を成功させています。

ちなみに商社マン開司のキャリアがこんな感じです。

 

ちなみに、英語ができるやつって、コミュニケーションも上手なんですよね。

だから就活にも強いのでしょう。

 逆に、英語ができても根暗だったりすると、就職もうまく行きません。

しかし「英語できるぜ」という自信が、多くの帰国子女に根拠のないアルファ・オーラを付与します。

なので多くの帰国子女は、

男なら「スペック以上に俺はできる」と思っているし、

女なら「実際の外見以上に、自分は可愛い」と考えていることが多いです。

 

学歴は稼ぐためには必ずしも必要ではないというのはその通り。

ただ、エリートサラリーマンになれば、30歳ぐらいで年収1000万も視野に入ります。

これは、相当に勝ち組と言えるのではないでしょうか。

厳しい受験戦争を幼少期留学のみであっさりとパス。

この「コスパのよさ」に驚くばかりです。

 

2016年の日本で「英語ができること」の価値はこれほどまでに大きいのです。

そして、留学さえすれば、概ねどんな人でも、英語はペラペラになります。

 

いくつか注意点を考えてみます。

 

家族で海外移住した場合は、1年ぐらいでは、そんなに英語はできるようになりません。

なぜなら、家に帰った後は日本語をしゃべるからです。

日本語の漫画、テレビ、ゲーム、友人に浸っている時間の方が英語を使っている時間より圧倒的に長いので、なかなか上達しません。

この場合、実用に耐える英語を習得するには3−4年は必要だというのが、僕のイメージです。

僕がこんな感じです。

 

逆に、全寮制で、24時間周りにネイティブしかいない、という環境であれば、スピードは何倍にもなります。

具体的には、1年ぐらいでほぼネイティブ並みになります。

なので、こっちのパターンが良さそうです。

まあドロップアウトしたりいじめられたりするリスクはありますが。

 

後は、留学する年齢です。

一般的に若い方が現地に溶け込みやすいし、吸収も早いです。

しかし、英語の中身が低レベル(アカデミアや仕事での使用に耐えない)だったり、

忘れるのも早いというデメリットもあります。

0−5歳は留学の意味なし、小学生の場合は帰国後も英語の勉強継続、っていう感じです。

 

バランスを考えると、中学生・高校生あたりがベストでしょう。

この辺は、本人の適正にもよりますが。 

 

というわけで、親が子供にさせてあげることで、

一番コスパが良い教育は、「英語を身につけさせておくこと」というのが

僕の結論です。

 

ところでAiの進歩により、英語の学習が不要になる説があります。

人工知能は人間を超えるのか」とかも読みましたが、僕は極めて懐疑的です。

 

Googleさんのおかげで、文章の翻訳はかなりの精度になっているのは認めます。

ただ、その文章が「英語として正しいのか」判断するには、

英語ができないといけないというパラドックスがあります。

 

Aiの進歩の一番の恩恵は、英語ができない日本人に、勉強しない言い訳を与えてくれたことじゃないですかね。

ま、僕には関係のない話ですけどね。